あるところに、妖の少女がいました。

彼女が、気持ちが良いからと、雨の中を走り回っていた時の事。

「こら、何してるんだ、かぜひくよ。こっちにおいで、早く」

そんな風に、男性から声を掛けられます。

彼は側まで駆け寄ると、少女をバス停の屋根の下まで連れて行き、体をタオルで拭きました。

「─そのタオルはあげるから、しっかりふいて、かぜひかないようにね」

男性は彼女にそう言い残し、到着したバスに乗り込みます。

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妖の少女が貰って、持ち帰ったタオル。

それは、温かくて柔らかなものでした。

「きっと、とても、とんでもなく良いものに違いない」

彼女には、そんな気がしてきます。

「返してやろう」

そう考えた妖の少女は、翌日、男性に会いに、あのバス停まで行きました。

そして彼女は、話しかけます。

「…おい!昨日は世話になったな!…実は昨日もらった物を…」

しかし男性には、その存在自体を気付いてもらえなかったのでした。。。

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その日以降、雨が降る度に、妖の少女は、そのバス停まで行きました。

雨の中で はしゃぐ自分の姿を男性に気付いて貰うために。

あの日の様に、彼がもう一度、自分に駆け寄って来てくれる事を期待して。

しかし再び、男性が妖の少女に気付いて、駆け寄ってくる事はありませんでした。

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本来、妖かしの姿は、普通の人間に見える事は、滅多に有りません。

稀には、自分の意志で、その姿を見せる事が出来る、力の強いものもいます。

そんな力のない妖は、時々、天候のいたずらで、人に姿を晒してしまう事があるだけ。

あの雨の日、少女の妖の姿が男性に見えたのは、たまたま起こった偶然の出来事だったのでしょう。。。





    

    
★過去の作話★「月白の諧謔」

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