銀曜日の戯言

領国は越前敦賀 官位は従五位下 官職は刑部少輔

「契りあらば 六の巷に まてしばし おくれ先立つ 事はありとも」

ご訪問、有難うございます。

当ブログでは、コミックや文字本の、興味深かったエピソードや、個人的な駄文、オリジナルの作話を掲載しています。

作話

こっちのもの

「もしや、お客様…」

フロントの女の目は、宿泊者カードの私の名前の欄で止まった様だ。

「─ あの島様ですか?」

あと少しの所で、気付かれてしまった。

鍵さえ受け取って仕舞えば、こっちのものなのに。

そこまで行けば、流石にホテル側も、宿泊を断れないのだから。

心の中で舌打ち。

やっと見つけたホテルだが、宿泊を諦めるしかないのか。

半ば諦めた私に、すっと差し出される部屋の鍵。

「どうぞ、ごゆっくり、お過ごしください」

「え?」

「期待してますよ♡」

私の目が、鍵から女の顔に移動する。

「…な、何をですか?」

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「事件に決まってます!」

フロントの女の口調が、すこし砕ける。

「島様は…事件を呼ぶ探偵として、有名じゃないですか。」

「…」

「訪れる所、必ず殺人事件が起き、それを見事の解決する探偵!」

不本意な二つ名に、私は顔を顰めた。

「それは、たまたま…」

「─ ホテル協会のブラックリストに載る程度の頻度を『たまたま』とは、言いませんよ♡」

頭に甦る、過去に色々なホテルで受けた対応。

やはり私は、ブラックリストに載せられていたのだ…

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「さっき…事件を期待しているって、言いましたよね?」

疑問を解決すべく、私は気を取り直す。

「はい」

「…どうしてですか?」

「その方が、当ホテルには、好ましいからですわ」

フロントの女は当然の様に言った。

「最近は、敢えて宿泊される物好きなお客様が…結構いらっしゃいまして」

「─ 事件が起こったホテルにですか?」

「はい。」

女が声を潜める。

「今は『何かが出るらしい』と言う噂しかないので、それなりの数しか、お泊り頂けないのですが…」

「…」

「名探偵、島様が手掛けた、殺人事件の舞台ともなれば…かなりの数のお客様に、おいで頂けますわ♡」

私は呆気に取られて、何も言えなかった…

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そして…何故かホテルで発生する殺人事件。

遺憾ながら私は いつもの様にそれに巻き込まれ、解決する羽目になる。。。

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「チェックアウトの手続きを」

私の動きを、フロントの女が手で遮った。

「料金は結構です。」

「─」

「島様には、色々と お世話になりましたので…サービスさせて頂きます」

「…では、遠慮なく」

カウンターから離れようとした瞬間、ファイルが差し出される。

「何ですか? これは…」

「ホワイトリストです」

「え…?」

「島様の宿泊を、歓迎するホテルの一覧ですわ」

思わず伸びる私の手。

女は、明るく囁いた。

「世の中…捨てたもんじゃないですよ♡」




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探偵のお話



    

    
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忘れたの?

目の前には、ヴァージンロード。

緊張している私は、隣のお父さんの腕に、縋り付く様に歩きます。

進む先には、彼が微笑んで立っていました。

祭壇の手前で、立ち止まる私とお父さん。

一歩踏み出した彼が、手を差し出します。

お父さんがその手を固く握り、交わさる握手。

今にも泣き出しそうな お父さんの横から、私はゆっくりと、彼の隣に移動しました。

腕を絡めながら、感極まって囁きます。

「幸せ過ぎて…夢みたい」

「─ これは、君が見ている夢だよ」

「え…?」

「お父さんも僕も…君がバラバラにした事、忘れたの?」

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夢から覚める私。

「はい、起きて、起きて!」

居間のソファで居眠りしていた身体を揺らしたのは、旦那様でした。

「準備が出来ました。お・く・さ・ま」

促され、はっきりしない頭で、テーブルに向かいます。

先に向かいの席に座った旦那様は、何か言いたげに私を睨みました。

「結婚3周年の料理、結局、僕が1人で作ったんだけど!?」

「…ジャンケンに負けたんだから、仕方ないよね?」

「少しぐらい手伝ってくれても、バチはあたらないんじゃないかな。」

旦那様の機嫌を直すため、私の手がワインの瓶に伸びます。

「はい、注いであげる」

苦笑しながら、グラスを差し出す旦那様。

「飲ませれば、ごまかせると思ってない?」

「実際、ごまかせてるし♡」

ワインで満たされたグラスを、旦那様はテーブルに置きました。

「次はワタクシめが、お酌させて頂きますよ、奥様」

私は、持っていた瓶を手渡します。

「苦しゅうない」

「…あんたは、何処の姫様だ」

グラスに伸びる私の手。

それが、途中で止まります。

「今日は、飲むの止めとこうかな」

「どういう風の吹き回し?」

「飲んだら寝ちゃうでしょう? この幸せが…夢になるといけないし」

「何を言ってるんだかるんだか…」

腰を浮かした旦那様は、腕を伸ばして、私にグラスにワインを注ぎました。

「─ これは、君の見ている夢だし」

「え!?」

「君は…僕を殺して埋めてるんだよ?」

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「…意識が戻った様だな」

きつい何かの匂いで、無理やり覚醒された私。

いつの間にか、座らされていた椅子の上で身を捩ります。

そこは、抵抗していた独房ではなく、知らない部屋でした。

1人の刑務官が差し出した紙が目に入ります。

それは、私への死刑執行の命令書でした。

凍りつく意識。

刑務官は何かを読み上げますが、それは ただ鼓膜を揺らすだけでした。

一瞬の沈黙の後、部屋に重い声が響きます。

「刑を執行する」

立たされた私は、目隠しをされ、後ろ手に手錠を掛けられました。

「これは、夢よね!」

身を揺すって抵抗しますが、数人の手で前方に引きずられます。

「夢なんでしょ!!」

太い何かを巻きつけられる首、縄で纏められる足首。

「お願い!!! 夢だと言って!!!!」

大きな音がして、身体が宙に浮いた瞬間、頭の中に声が響きました。

「─ これは、現実だよ。」



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夢のお話



    

    
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災難だと思って。。。

「これ、掛けてみてよ!」

定番デートコースである眼鏡屋の店頭。

雅紀君は、目に止まった眼鏡に、手を伸ばしました。

「え?」

棚から、次に雅紀君に掛けさせる眼鏡を物色していた茜さんが振り返ります。

「な、なんで…」

「茜の眼鏡姿が、見たい。」

「イ・ヤ!」

茜さんは視線を逸らしました。

「私には、似合わないし。」

唇を噛む茜さんの耳に、雅紀君が囁きます。

「我儘に付き合って、色んな眼鏡を、取っ替え引っ替え掛けて見せてる僕の、ささやかな願いを、聞いてくれないの?」

「わ、判ったわよ」

渋々受け取った眼鏡を、茜さんは不本意そうに掛けました。

「どう? 似合わないでしょ!」

「そんな事ないよ♪」

ニコニコ顔で眺める雅紀君。

絶えきれなくなった茜さんの手が、眼鏡のフレームに伸びます。

「─ もう、良いよね?」

「自分の眼鏡姿、鏡で、確認しなきゃ。」

「見たくないの!」

眼鏡をそそくさと外し、戻す棚を探す茜さん。

その様子を眺めながら、雅紀君が苦笑します。

「可愛かったのに。。。」

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「駄目だからね!」

茜さんは、先に眼鏡屋を出て、扉の横で待っていた雅紀君に軽く指を突き付けました。

「いきなり、何?」

「レーシック」

呆れた顔で、歩き始める雅紀君。

「…するなんて言った覚え、ないんだけど」

「一応、釘を差しておこうと思って。」

数歩いて、茜さんが追いつける様に、立ち止まります。

「眼鏡を…しなくなるから?」

横に追いついて、小さく頷く茜さん。

雅紀君は、視線を前に向けて呟きました。

「必要なくなても…デートの時には、掛けてあげるって」

「伊達眼鏡は、邪道なの!」

「マニアの拘り?」

「私はごく普通の眼鏡好きであって、マニアじゃないから!!」

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「茜ってさあ…」

意を決した様に、雅紀君が口を開きます。

「僕が眼鏡してたから、付き合いたいって思ったんだよね?」

横を歩いていた茜さんは、能天気に肯定しました。

「そう♡」

「もしコンタクトレンズにしたら…どうするつもり?」

「─ 別に、どうもしないよ」

「眼鏡、掛けなくなっても?」

茜さんは、前に回り込みました。

「もう雅紀の事が…取り返しが付かないぐらい、好きになってるから。。。」

「…え?」

「災難だと思って、眼鏡は諦める。」

急いで顔を背けた雅紀君が、眼鏡のブリッジの中央を人差し指で押し上げます。

いつもの様に、フレームの両端を持って眼鏡を直さないのは、動揺を隠すためだと確信し、ニンマリする茜さん。

勝利宣言をするため、雅紀君の耳に、顔を近づけます。

「参ったか♡」

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「もしコンタクトに変えても…」

雅紀君に腕を組む様に催促する茜さん。

「デートの時には、眼鏡を掛けて来てね?」

左腕を差し出しながら、雅紀君は渋い顔をします。

「…さっきの感動が、台無しなんだけど」

「災難だと思って、諦めたら?」

茜さんは、差し出された腕に縋り付きました。

「雅紀だって、もう私の事…取り返しが付かないぐらい、好きになってる筈だし♡」



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デート中のお話



    

    
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紀之介
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